ドラクエ6を現代の物価にしてみて、世界が支配された理由を探る
誰もが勇者になるチャンスがあったドラクエ6の世界
ドラクエ4から始まった天空シリーズは、このドラクエ6が最後となりますが、時間軸で言えば、天空シリーズの始まりの世界となります。
順番でいうと、ドラクエ6→ドラクエ4→ドラクエ5となり、ドラクエ6で勇者となったものの血筋が、何度も世界を救うことになります。
ドラクエ6における勇者とは、ただの職業の一つという位置づけであるため、主人公以外でも、研鑽を続けると勇者になれるのが特徴です。
始まりの世界なので、そのあたりもフロンティアな時代でした。
しかし、主人公のパーティメンバー以外では、あえて勇者になる者はいないまま、大魔王によってダーマ神殿は封印されてしまいます。
なぜ、勇者になる者が出てこなかったのでしょうか。
今回も、ドラクエ4で導き出した宿屋の値段から、1G=500円をベースに世界を見ていきたいと思います。
あくまでお遊びの範疇なので、細かい点の不備はご容赦ください(笑)
1泊6G=3,000円からスタート
ドラクエ6のスタート地点で、一番最寄りの宿屋は1泊6G=3,000円と、ドラクエ4や5に比べると、少し高めの料金となっています。
とりあえず、一般人が冒険に出るために、最低限の装備をそろえようとすると、140G=70,000円が必要になります。
ひのきの棒 | 10G | 5,000円 |
ただの布切れ | 25G | 12,500円 |
おなべの蓋 | 40G | 20,000円 |
かわの帽子 | 65G | 32,500円 |
合計 | 140G | 70,000円 |
この時代に、ワークマンがあれば、「通気性の高いかわの帽子」「撥水加工のただの布切れ」など、もっと機能性の高い装備が格安でそろえる事ができたかもしれません。
冒険に出るにも、先立つ物が必要です。
かっこよさを求める世界
ドラクエ6の世界には、ベストドレッサーコンテストという、かっこよさを競う大会があります。
レベルが上がることでも、かっこよさのステータスは上がりますが、それだけでは優勝はできません。
やはり、見た目である装備品も、攻撃力や防御力だけでなく、かっこいいもので揃える必要があります。
現代であれば、時計のオメガのスピードマスターやシーマスターのように、実用性も高く、デザインも優れているものを身に着ける必要がありますが、やはりかなり高価な代物になります。
この世界では、オシャレな鍛冶屋にお願いすれば、武器などのかっこよさをレベルアップしてくれます。
例えば、ビッグボウガンという高級な武器も、20,000G=1千万円という大金を支払えば、かっこよさを65もアップしてくれます。かっこよさ1=15万円ほど掛けている計算になります。
オシャレに鍛えなおせば、売価も上がると言われていますが、実際のところ、20,000G=1千万円払っても、3,750G=1,875,000円しか買取価格が上がっていません。
ビッグボウガン(前の売価) | 27,750G | 13,875,000円 |
ビッグボウガン(後の売価) | 31,500G | 15,750,000円 |
差額 | 3,750G | 1,875,000円 |
明らかに投資した金額に見合った結果にはなっていません。人々は、こんな事に夢中になっているのです。
モンスターもステータスアイテム
この世界では、スライム系モンスターの一部を仲間にできます。(DS版をベースにしています)
冒険の中で、仲間としてパーティーメンバーに加えて、旅をしていきますが、能力的にみても、戦闘のレギュラーメンバーとしてセンターに立つことは、なかなかありません。
現代で言うと、珍しいペットを飼育しているというステータス的な存在に近いかもしれません。
しかも、スライムアーマーやスライムメットなど専用防具などを装備させてやっていると、まさに服を着せて散歩しているミニチュアダックスフンドと同じ感覚です。
しかも、上位の装備を求めると、そこそこ高価なものになります。
スライムアーマー | 8,000G | 4,000,000円 |
スライムメット | 2,000G | 1,000,000円 |
また、手持ちのスライムに、これらを装備させ、スライム格闘場の大会で優勝させる事もステータスとなっています。
しかも、最高ランクの大会に出場するには、1回5,000G=2,500,000円を支払う必要があります。
貴族や名士によって行われていた昔の闘鶏や闘牛などと同じ世界です。
スライムはステータスシンボルなので、これに費用対効果や実用性なんて考えるのは、野暮でかっこ悪いようです。
カジノの狂乱レート
一攫千金によって珍品を手に入れる事ができるカジノですが、コイン1枚20G=10,000円もします。
現代のパチスロのコインが1枚20円と考えると、単純に考えて200倍もするため、簡単に手を出せるような遊びではないはずですが、いつも賑わいをみせています。
1コインスロットでも、1ゲームで5列掛けると100G=50,000円となります。これでも、かなり痺れるゲームです。
100コインスロットになると、1ゲームで3列で6,000G=3,000,000円となります。世界有数のセレブの中のセレブだけができるギャンブルです。
そして、コイン20,000枚=400,000Gで交換できる珍品「メガザルの腕輪」ですが、買取価格で見ると3,750G=1,875,000円にしかなりません。
中古で売って儲けるなんて考えないのがこの世界の住人の嗜みです。
コイン(20,000枚) | 400,000G | 200,000,000円 |
メガザルの腕輪 | 3,750G | 1,875,000円 |
ここで交換できるアイテムの中には、売却できない珍品も多く、まさにただの戯れです。
まとめ
この世界は、ベストドレッサーコンテストやスライム闘技場など、栄誉や名誉を満たすイベントが多く開催されています。
しかも、持つ者は、お金を使う事で、持たざる者よりも有利に進める事が可能な、格差を感じる世界です。
その反面、コツコツを職業を極める事で、誰でもが勇者になれる時代でもありました。
勇者になっても、収入が激増する事はなさそうですが、「勇者様」と呼ばれるような社会的な地位を得る事はできそうです。
ただ、世界を救うという社会的義務感を押し付けられ、それまでの努力に対して割に合わないので、あまり希望者はいなかったのかもしれません。
人々は、奢侈に流されていき、その人々の心の隙をついて、ダーマ神殿は滅ぼされ、現実世界では勇者になる手立てを失いました。
自分たちは勇者にならずに、勇者の到来を期待するという都合のよさも垣間見ます。
ドラクエ6も、とても奥深いゲームです。
モリアド代表 中小企業診断士
前職にて企業の海外WEBマーケティングの支援に従事。独立後に中小企業診断士の資格を取得し、主に企業の経営サポートやWEBマーケティングの支援等を行っている。
2019年から、現代のビジネスフレームワークを使って戦国武将を分析する『戦国SWOT®』をスタート。
2022年より、歴史人WEBにて『武将に学ぶ「しくじり」と「教訓」』を連載。
2024年より、マーケトランクにて『歴史の偉人に学ぶマーケティング』を連載。
著書に『SWOT分析による戦国武将の成功と失敗』(ビジネス教育出版社)。