【ガンダムSWOT】アナハイム・エレクトロニクスに訪れたイノベーションのジレンマ

小型化高性能MSの開発が遅れたアナハイム・エレクトロニクスの斜陽

 

ガンダムの世界観を支えるのは、モビルスーツのカッコよさや魅力的なキャラクターだけではなく、そのリアリティのある各種の設定です。

まさに、Zガンダムのような、地球連邦軍内部のティターンズとエゥーゴの路線対立による内部抗争などは、フランス革命後の政治闘争を彷彿とします。

また、これらの戦争を裏で支える存在として軍事産業や組織も設定されています。

それが、アナハイム・エレクトロニクスです。

アナハイム社は、1年戦争と呼ばれるジオンと地球連邦軍との大規模な戦いによって、急激に業績を拡大してました。

以降、ジオン系の企業の買収や技術者の採用、競合他社のM&Aを行ってモビルスーツの開発力の強化に邁進し、その生産力と地球連邦政府とのネットワークを活用して、モビルスーツの市場を独占的に支配するようになります。

アナハイム社による1社独占状態が20年ほど続いていました。

その間、マフティーの動乱が終了すると、組織的な抵抗が無くなり平和が続いた事で、モビルスーツを含めた軍事関連の需要が低下していきました。

それに伴い、アナハイム社の新規開発力も比例するように低下していきました。

軍事予算の低下もあり、モビルスーツの小型化高機能によるコスト削減が求められるようになってきました。

しかし、独占的な市場で安定的に商品を供給してきたアナハイム社は、革新的な技術開発を必要としない状態が続いていた為に、その新しいニーズ(市場)への対応が遅れます。

また、高コストな大型モビルスーツや兵器による収益構造の変化を嫌って、開発自体をサボタージュしていました。

一年戦争時は18mだったガンダムですが、マフティーの動乱で使用されたΞガンダムは高さ26mにまで巨大化して、巨大化と高コスト化が進んでいました。

そうしたアナハイム社による独占的な支配に対する警戒感も強くなっており、正常な競争のある市場への回帰への期待もあり、新興企業の市場参入が応援される土壌が生まれていました。

そこで競合として、新しい小型モビルスーツ市場にサナリィが参入し、小型高機能モビルスーツの開発に成功します。

サナリィが開発したガンダムF91は高さ15mとΞガンダムの約半分でした。

あくまでアニメの世界での設定なのですが、Zガンダムの頃に隆盛を究めつつあったアナハイム社が、約40年後のガンダムF91の時には、斜陽企業になりつつあるというのが、非常にリアルな設定だと感じます。

アナハイム社が、大企業化かつ市場独占により、イノベーションのジレンマに陥って、モビルスーツ市場での優位性を失っていくという設定は、現代の企業の苦しみを彷彿とさせます。

さらに、モビルスーツの小型化競争に敗れた30年後には、かつての先進性を失い、他組織が設計開発したモビルスーツのOEM生産を担うビジネスモデルを採用するようになっていました。

逆に言えば、モビルスーツ開発のファブレス化が進んでいっている点もリアリティがあります。

こういった点が、ガンダムという世界観が40年以上も愛されている要因の一つだと思います。

しかし、モビルスーツの小型化はサナリィが地球連邦軍に提唱して生まれた新興市場だったという設定も絶妙ですし、大企業になっていたアナハイム社が破壊的イノベーションを図れずに敗北するという設定もリアルです。