【戦国でSWOT】事業承継の失敗事例:内外との信頼関係の構築に失敗した武田勝頼

ベテラン家臣団や周辺の同盟国との信頼関係の構築に失敗し、武田家滅亡の道へ

先代の武田家当主である武田信玄は、武力と調略を駆使して、甲斐、信濃、駿河、上野と遠江の一部にまで版図を拡大させました。

「人は城、人は石垣、人は堀、情けは味方、仇は敵なり」の名言の通りに、家臣団をうまくマネジメントして、強力な家臣団を構築していました。

武田信玄の突然の病死によって、その家臣団を引き継いだ四男の武田勝頼ですが、9年後には武田家を滅亡に導いてしまいます。

<武田家の滅亡までの工程表>

1572年三方ヶ原の戦い(西上作戦)
1573年武田信玄死亡(突然の家督承継)
1575年長篠の戦い(譜代家臣の損失)
1578年上杉家の御館の乱へ介入(北条家との対立)
1582年織田家による甲州征伐(武田家の滅亡)

 

しかし、彼は無能だった訳ではなく、敵の信長から「日本にかくれなき弓取なれ共、運がつきさせ給いて、かくならせ給う物かなと御仰けり」と、滅亡したのは運が悪かったからだという高い評価をされています。

敵方の武将と組み打ちを行い討ち取ったり、馬上で一騎討ちを行ったりと戦闘能力は高かったようです。

ただ、優れた武勇だけでは、信玄時代からの譜代家臣たちを心服させる事はできなかったようで、組織としての綻びが始まります。

今回は、そんな武田家の滅亡の原因について考察したいと思います。

戦国でも現代でも、後継者が悩むのは、ベテラン社員との関係性

20年、30年と長年に渡って先代についてきたベテラン社員の全員と、いきなり良好な関係を築くのは難しいかもしれません。

時間を掛けて新しいビジョンや理念を提示して、地道にコミュニケーションを取り、関係性を強化していくしか方法はないと思います。

しかし、武田勝頼の場合は、自らの武勇を家臣に示しすように、徳川方へ寝返った奥平家を強引に攻め、信玄の病死から、わずか2年後に、運命の分岐点である長篠の戦いを仕掛けます。

結果として、織田・徳川連合軍に大敗を喫します。

そして、有能な譜代家臣の多くを失って、国力を大きく低下させてしまいました。

その後の外交戦略でも大きなミスを犯してしまい、信頼を失った勝頼の元から、武田家の一門衆までもが離反していきます。

武田家の最大の強みだった「人は城、人は石垣、人は堀、情けは味方、仇は敵なり」が崩壊し、武田家滅亡のカウントダウンが始まる事になります。

ちなみに、越後の龍の後継者の上杉景勝は、御舘の乱という家督争いで、自分の支持派と反対派を明確にする事ができました。

その争いに勝つ事で、自派閥の団結力を高める事ができ、その後も、反対派の粛清を進めて、自分との関係性が強固な上杉軍団を構築に成功しました。(ただ、進めすぎて、自派閥だった新発田重家に反乱されて長期的に困らせられます。)

外部との信頼関係の再構築にも大失敗

勝頼は、長篠の戦いで多くの人材を失って、内部がガタガタしているため、周辺国との同盟関係の再構築により外部環境を整えようとします。

しかし、上杉謙信が突然亡くなった事で、上杉家内で、謙信の養子である景勝(姉の子)と景虎(北条家出身)による家督争いが勃発してしまいます。

武田家の同盟国である北条家は、自家と関わりの深い景虎を支援するように、勝頼に依頼をしてきました。

その依頼を受けて、越後に向かった勝頼ですが、なぜか景勝と条件付きの和睦をして、勝手に兵を引き上げてしまいます。

北条家から不誠実な対応だと思われても仕方ありません。

上杉家との関係は良くなりましたが、逆に北条家とは対立関係になってしまいました。

その後、北条家は、織田・徳川と同盟を結んで、信長による甲州征伐を側面支援し、武田家滅亡をサポートする事になります。

ここでも、「人は城、人は石垣、人は堀、情けは味方、仇は敵なり」の「仇は敵なり」がポイントになっています。

もし、景虎を支援していれば、上杉家、武田家、北条家の強固な三国同盟が出来て、織田・徳川の連合軍と対峙できたかもしれません。

現代の事業承継時でも、取引先や仕入先、金融機関などの外部との信頼関係は、社員との信頼関係と同様に重要な項目です。

まとめ

戦国でも現代でも、スムーズな事業承継は、非常に難しい課題です。

事業承継をしたばかりの武田家に必要だったのは、勝頼自身の戦の強さや武勇などではなく、内部の家臣団や外部の周辺国との地道な関係性の再構築だったと思います。(ただ、状況的に、そのような時間が残されていなかった可能性もあります。)

現代においても、スムーズな事業承継には、何年も時間を掛けて、承継者と社員の信頼関係の再構築や取引先や金融機関との関係性の構築を進めておく事が、重要だと言われています。

武田家のような事例を踏まえて、早め早めに事業承継の準備をしておくのが、残された承継者の為だと思います。

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